理事長挨拶



日本正常圧水頭症学会
理事長 伊達 勲

 日本正常圧水頭症学会の理事長に就任しました岡山大学脳神経外科の伊達 勲です。前理事長の新井 一先生に引き続き本学会の発展に努めたいと存じますので、よろしくお願い申し上げます。

 本学会は2000年に日本正常圧水頭症研究会としてスタートいたしました。正常圧水頭症には特発性正常圧水頭症と二次性(くも膜下出血後など)正常圧水頭症がありますが、本会では主に特発性正常圧水頭症(idiopathic normal pressure hydrocephalus, iNPH)に関する討論が行われてきました。当時は種々の疾患に対する診療ガイドラインの作成が進んでいた状況にあり、本研究会でも世界に先駆けて2004年に「特発性正常圧水頭症診療ガイドライン」を刊行し、iNPHに関する医学会の関心を大いに高めることになりました。

 学会内(当時は研究会)では、ガイドライン作成作業で生まれたclinical question、特に画像診断におけるDESH(disproportionately enlarged subarachnoid-space hydrocephalus)の所見の重要性を証明すべく、多施設前向きコホート研究(SINPHONI)を行いました。その結果を2010年に論文発表し、診断においてDESHを重視することによって、シャント手術の成功率向上につながることが広く認知されるようになった次第です。2011年にはDESH所見を重視した診療ガイドラインの改訂も行われました。

 その後、2012年には研究会から学会へ移行し、また腰椎腹腔シャント術(LP shunt術)の有用性を検討する第2弾の多施設ランダム化試験(SINPHONI-2)が行われ、高いエビデンスを持つLP shunt術の有用性を示した試験結果をLancet Neurologyに2015年に発表することができました。世界中のiNPHに対する手術方法の選択に一石を投じたことになります。

 毎年開催される年次学術集会では多くの演題発表があり、演題数の増加に伴い、1日での開催ではおさまりきらないため、2016年からは2日間の開催となっています。今後、学会として新しい多施設前向き研究(SINPHONI-3)をアルツハイマー病理合併例を対象に計画しており、本学会の果たす役割はますます大きくなって参ります。

 多くの先生方が本学会に入会され、年次学術集会等を通じて、iNPHの診断、治療、患者さんのQOLの向上に貢献くださることを期待しています。また、皆様の活動でさらに本学会から新たなエビデンスが発信できれば幸いです。皆様のご協力をよろしくお願い申し上げます。

2017年5月

Page Top